ベートーベン作品紹介:その1

ピアノソナタ


いわゆる三大ピアノソナタ

それぞれ3つの楽章からなる。あまりなじみのない人はそれぞれの楽章を独立した曲として楽しんでも問題はないと思う。それぞれの曲が、上・中・下、と分かれていると考えても外れではない。ピアノソナタはピアノの独奏なので、交響曲のような華やかさはあまり期待しないほうがよいでしょう。ただ、内容は深く、そして豊かな作品がごろごろしています。曲にもよりますが聴けば聴くほど内容の豊かさに驚かされる・・ベートーベンのピアノソナタはそういうものが多いのです。 一般に・・(以下一部略)、あとyahooの検索で来た人へ


悲愴
piano sonata No.8

第一楽章
いかにもこの表題っぽい雰囲気を持ってスタートする。途中からはもう少し前向きな雰囲気を持たせた曲になってくる。重たいほうに行ってみたり、頭をあげて前進しだしたようなちょっと前向きな雰囲気になってみたり、と逡巡したりしているような雰囲気を一部感じさせるところもあるのだが、実際どうなのだろうか。ただ、3楽章ある悲愴の中で正直なところ一番退屈な内容である(なに)。なので私個人はあまりここを聴かず、続きの部分だけを聴いていることが多い。

第二楽章
なにやらやさしい雰囲気を持った部分。嵐が過ぎ去った後の静けさとでもいうようなものが漂っている。たまにTVのCMなどにも利用される。個人的には(どうも世間とずれてるっぽいけど)ベートーベンらしい、と感じる曲風。実はこういう雰囲気の曲がもっとも得意だったのではないかと思うときがある。

第三楽章
この曲の一番の聴き所だろうか。最初に気に入ったのはこの第三楽章だった。その後、自分の曲の理解は2,1楽章と進んでいったが、やはり一番面白いのは第三楽章であるように思う。他のソナタでも同じだけれども、やはり最後に一番いいものを持ってくる(というかそこで仕上げる)事が多い。さほど難易度も高くないのでちゃんと習うとそれなりに弾けるようになる。自分もそれなりに弾けた曲なのに巧い説明が思い浮かばないのが苦しいところ。何一つ無駄な音を含まない初期における傑作であると思う。下手に説明するよりはさっさと良い演奏を聴いてもらった方が早いかもしれない。(ぉぃ

個人的に薦めたい演奏家
フリードリッヒ・グルダ
ベートーベン弾きで個人的にもっとも高く評価しているピアニスト。悲愴の第三楽章は地味に力の差がでる部分らしく、彼の演奏が最もよいと思われる。他の演奏もお勧めできる内容のものが多い。amadeoのベートーベン・ピアノソナタ全集に収録されている。

アルフレッド・ブレンデル
初期のソナタやらマイナーなソナタなども丁寧に弾いている印象があるので個人的には好き。だが、なぜかソナタ全集は妙に値段がはるので買わない。バラだとわりと安く手に入る。




月光
piano sonata No.14

ベートーベンが眼の見えない少女に月の光のイメージを伝えるために作曲した、などという逸話が後に創作されたほど幻想的な第一楽章・第二楽章を有する。月光という表題はベートーベンによるものではなく、後につけられたものだが多くのピアニストは月光をイメージしたような演奏をしている。あまりベートーベンのピアノ曲を聴かないような人もわりとこのんで聴いているらしく、第一楽章だけ他の小物の曲と一緒につめあわされたようなCDに一緒に入っていることがある。ただ、やはり個人的には全体を通して聴いて欲しい。この曲も第三楽章が一番の聴き所だと思う。

第一楽章
冒頭の三連符が実に印象的。涼しげな、澄んだ月夜が思い浮かぶような曲。

第二楽章
月光という表題がついているせいかこれもどことなく月夜が思い浮かぶ。ただ、どことなく逡巡のような感情も表れているようにも思える。

第三楽章
月光という後付けの表題とは打って変わって、情熱的な曲想になる。ピアニストごとの違いもやはりこの楽章が一番差がでるところであろう。個人的には、やはりこの第三楽章が好み。

お勧めするピアニスト
ヴラジミール・アシュケナージ
教科書的、と言われることが多いように思うピアニスト。個人的には月光の第三楽章に限るなら(ってよくよく考えるとちょっとひどい言い方ですw)彼の演奏は評価したい。




熱情
piano sonata No.23

単純に情熱というのではなく熱情。どこか鬱屈したものというか、苦悩のようなものも感じさせる曲。ピアノ曲史上まれに見る傑作である。それだけに難易度も高く、ピアニストに要求されるものは実に高度。本当に弾きこなせるピアニストとなるとかなり少ないように思う。

第一楽章
聴く側にも要求されるものが多く、わかった気になるまでかなり時間がかかる。静かな始まりなのだが徐々にテンションが高まっていく。中盤以降は音量自体は小さいにもかかわらずテンションの高さはあがる一方なので聴き応えがある。

第二楽章
第一楽章とは打って変わって穏やかな曲。なのだが、途中からはやはり緊張感ある曲調になっていく。第一楽章とは違ってどことなく暖かさを感じさせるように思う。下を向いて悩んでいたところから決意を新たに頭を上げた・・ そんな感じかなぁ・・?(テキトーだ・・)

第三楽章
この曲の集大成だけあってすさまじいの一言。演奏面でも相当に高度な技術、音楽性が要求される。第一楽章、第二楽章で積み上げてきたものをあますところなくまとめあげ切ったというか・・一部の無駄もない実に引き締まった曲として仕上がっている。上がりつづけるテンションを怒涛のような最後で締めくくっているが、果してこんな曲が今後でてくるのだろうか、と思うほどの曲なので是非とも聴きこんでいただきたい。

お薦めする演奏家
フリードリッヒ・グルダ
わりと若い頃の演奏だろうか、すさまじいスピードで演奏しているものがある。それでいて技巧におぼれることなく真摯にこの難曲に取り組んでいる。それが熱情の演奏の中でもっとも個人的に薦めたいもの。最初に私が出会った熱情の演奏もこれだったが、それを抜きにしても彼のこの熱情はすばらしい。amadeoのベートーベン・ピアノソナタ全集に収められている。

スビャトスラフ・リヒテル
ライブ演奏で多少のミスも見受けられるのだが、怒涛の第三楽章は一度聴いておくと良いかもしれない。いつも聴くような演奏ではないのだが、聴き応えは十分。自分で演奏するならこんな演奏をできるようになってみたいとも思う。1960年頃の演奏らしい。MELODIYA THE RUSSIAN LABELから出されているCDに収録されている。


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