3日目
  2003.12.28
 昨日は、ホバート到着日でもあり移動の疲れで早目に寝てしまいました。おかげで今日は爽やかな目覚めです。これからホバートを後にいよいよタスマニア周遊の旅の始まりです。距離感がまだつかめていないのでホテルを早々にチェックアウトし、とにかく出発する事にしました。
 まず目指すは、ホバートの西に位置す
るマウント・フィールド国立公園です。ここにはタスマニアの観光ポイントのひとつでもある「ラッセル滝」(RUSSELL FALLS)があります。
 タスマニアの道路は、州都「ホバート」と北の玄関口「デボンポート」との間にハイウェイ1号線が走り、その他の道路はA、B、Cと分類されています。日本的に言うとAが国道、Bが県道、C
が町道のようなイメージです。ラッセル滝へは、ダーウェント川に沿って1号線、A10、B61と内陸部へ入って行きます。
 今日は日曜日、そして朝も早いせいか道路はすごく空いています。タスマニア自体、おそらく渋滞はないでしょうから、実際のところいつもこのような交通量なのかも知れませんが、とにかく極め
て快適なドライブです。ホバートのホテルを出発して約1時間くらいでMt.フィールド国立公園の入り口に到着しました。まだ午前8時すぎです。
 ラッセル滝入り口の駐車場に車を止め、看板の地図を見ると、ここから遊歩道にそって640m進むと滝があるようです。往復で25分と書かれていました。鬱蒼とした木々の中は、しっとりとしていて深緑の香りが漂い神秘的な感じがします。また酸素濃度が濃いような気もします。少し歩いていくと滝音の微かな響きが聞こえてきました。ふと横をみると一瞬、びっくり!ワラビー?でしょうか小動物が出迎えてくれました。
 さらに進むにつれ水音が大きくなってきたかと思うと、いきなり滝が視界に入ってきました。到着です。
 絹糸が岩肌を伝わり重なるように流れ落ちる様は、やさしく、そして繊細で、しばらく見とれてしまいました。雄大な見応えのある滝とはまた違って情緒のある滝もいいものです。マイナスイオンもたっぷり吸収しました。ここを起点にさらに奥にトレッキングコースがあるようですが、先の予定があるので遊歩道の帰路に向かいました。


 Mt.フィールド国立公園、ラッセル滝を後に、再びA10号線に合流、これからひたすら西へ進み、とりあえず今日の宿泊地「クイーンズタウン」を目指します。A10号線は、東に位置するホバートから西に位置するクイーンズタウンを結ぶ東西の主要幹線で、ホバート〜クイーンズタウン間は260キロあります。途中、世界遺産にも指定されているセントクレア湖国立公園を通る景勝豊かな美しい道路です。交通量も極めて少ないので、ついついスピードを出しがちですが、そこはセーブして雄大な景色を楽しみながら進みました。タスマニアでは、町中やカーブでは速度60キロ以下に制限されますが、それ以外は、ほぼ100キロの制限表示となります。とにかく快適に走れる環境は、日本の慢性混雑状態とは雲泥の差です。
 ラッセル滝から走りだして、約2時間で、セントクレア湖に到着です。A10から脇道に入るとカーパークとインフォメーションセンターがあり、ここで車を止めて小休止。そしてお昼にも近いので、ビーチエリアで昼食にしました。ランチ自体は用意しておいた、ありあわせの簡単なサンドイッチですが、湖を眺めながらの贅沢なランチになりました。
 セントクレア湖は、世界遺産でもあるクレイドルマウンテン(クレイドル山)の南側に広がる聖なる湖で、「過去200万年にわたっていくつかの氷河の氷が削りとられて作られた。」と記されていました。またダーウェント川のスタート点です。
 このあたりもブッシュウォーキングのコースがいくつかあり、バックパッカー達が地図でコースを確認している姿がみられました。
 セントクレア湖からクイーンズタウンまでは、あと100キロ足らず、1時間くらいで着く距離です。さらにA10号線を西に向かいました。相変わらず対向車ともほとんどすれ違いません。
 ここまでは、比較的平坦な道でしたがクイーンズタウンの手前になって峠越です。きつい坂を登りきった頂上からは町がかすかに望めました。クイーンズタウンは鉱山の町だそうです。町自体には、これといった観光地ではないのですが、クレイドルマウンテンを始めとするタスマニア西部の拠点とするにはいい場所だと思います。小さい町ですが、ホテル(モーターイン)も何軒か集まっています。峠を一気に下り、予約しておいた「ウエスト・コースター・モーターイン」を目指しました。このあたりの宿泊は、いわゆるホテルというものはほとんどなく、モーターイン形式がほとんどです。入り口にあるフロントでチェックインし、部屋のキーをもらって、車で部屋の前まで移動し、玄関前に車を止めるようになっています。部屋の造りは、ごくシンプルですが、明るくて、清潔で、今晩寝るだけですから十分な施設です。
ちなみに1部屋泊でAU$95でした。
 大きい荷物は車から一旦おろし、ちょっと一服したあと、これからストローンへ向かいます。ストローンは、本日のビッグイベント、ゴードンリバーのクルーズです。

 ストローンの町は、タスマニアの西、マックォリー港に面した観光地で、ゴードンリバー・クルーズの出発点になっています。クルーズは、港内を周回したあと、ゴードン川を上って世界遺産に指定されているフランクリン・ゴードン・ワイルドリバー国立公園に入ります。
 クルーズを運行している会社は、2社あり、ひとつは、ワールド・ヘリテージ・クルーズ World Heritage Cruises、もうひとつは、その名もゴードンリバー・クルーズ Gordon River Cruisesです。どちらもツアーの内容は、ほぼ同じ様なものでしたが、12月にアフタヌーン・クルーズを実施しているゴードンリバー・クルーズの方へ予約をいれました。1日2回のクルーズがあり、午前は8時半、そして午後は2時半の出港です。
 クイーンズタウンからストローンまで、B24号線を西へ約40キロ、車で1時間弱かかるので、ストローンへ急ぐ事にしました。
 余談ですが、クイーンズタウンとストローン間は、観光用の蒸気機関車も運行されていて、時間があればぜひ利用してみたいものです。
 ストーンまでの道中は、ひと山越えるといった感じでアップダウンとカーブの多い道でした。30分ほど行くと向こうに海が見え、下り切りるとストローンの町に着きました。クルーズ船の乗り場は海沿いに出たところですぐに分りました。商店なども集まっていて賑わいのある一帯です。時間は、2時半近くになっていたので、急ぎチェックインカウンターでチケットの受付けを済ませましたが、船内はまだ準備中で出港までには少し時間がかかるようです。乗船客らしき人達は、すでに船の周りに集まっていました。3時前になってようやく乗船。定員の半分くらいの乗客でしょうか、まあまあ余裕はある感じでした。
 雨の非常に多いタスマニアの西部ですが、本日の天気は快晴。絶好のクルーズ日和です。船着き場を離れると、まずはヘルゲート(Hells Gate)「地獄門」と呼ばれるマックォリー港の突端、最も狭くなっている場所に向かいました。ここに設置されている白い見張り塔が印象的です。
 ヘルゲートから南に迂回し、サケとマスの養殖場を通りました。ちょうど餌付けの最中です。活きのいい魚を眺めたあと、これから、ゴードンリバーに向かうわけですが、船内では、蜂蜜の試食が配られてきました。新鮮な蜂蜜でストローンの名産品らしい。たしかに、なめてみるとすごくスイートで美味でした。(右の写真をクリックすると大きい画像になります)
 そうこうしているうちに、マックォリー港からゴードンリバーの河口の方へ入ってきました。周囲は鬱蒼とした森林地帯です。フランクリン・ゴードン・ワイルドリバー国立公園、世界遺産指定地域になります。内陸からゴードンリバーに通じる道路はまったくないので、船がこの地域に入る唯一の手段です。ですから手付かずの自然がそのまま残されています。森林の中にはタスマニアの貴重な樹木、ヒューオンパインも多いとの事。このあたりは、本当に雨が多く、快晴となるのは年間わずかな日数だそうです。
 ゴードンリバーに入るにつれ、水の色が茶褐色に変わってきました。これが、よく言われるタスマニアの赤い水でしょうか。日の差しているところは、特に赤く映ります。森林植物から、タンニンが水に溶け出し、空気に触れることで紅茶のように赤くなるそうです。これもタスマニア独特のものです。
 ゴードンリバーをしばらく上ったところにランディング(接岸)ポイントがあり、国立公園内の様子を観察できるようになっています。船の往路はここまでで、乗客は係員の誘導で公園内に入りました。森林内に木製の周回道が造られていて一方通行、案内に従って観て回るわけです。
 樹齢1000年にもなるヒューオンパインや神秘的な降雨林が散策できます。現在のオーストラリアでは森林火災が深刻な問題になっていますが、このあたりでは、400年以上火災はなく、自然の状態が長く形成されているそうです。



 世界遺産上陸の後は、ゴードンリバーを下り、セーラ島(Sarah Island)に向かいました。セーラ島は、かつて(1822-1833)の囚人入植地で強制労働収容所だったそうで、当時の痕跡が残されています。本島から高品質のヒューオンパインをこの島に運び、苛酷な労働条件で船を造らせていたそうです。2000人の囚人、職員、そして軍事関係者が生活していました。今だ実体が解明されないところもあり複雑ないわくを持つ島のようです。
 島内では、住居、刑務所、レンガ造りのオーブン、造船所跡など小一時間ほど観て回りました。
 セーラ島を離れたのは、すでに7時半になっていました。日もようやく傾き始めています。クルーズ船は、このあとはストローンへ一路帰港です。この時間を利用して、船内で食事をとる事も可能になっています。デッキに出てみると潮風が爽やかです。気持ちのいいクルーズでした。
<参考>
 左が、今回利用したゴードンリバー・クルーズの船で、ちなみに右がワールド・ヘリテージ・クルーズの船です。