5日目
  2003.12.30
 ロンセストンからバス海峡に(北へ)向かってタマー川が流れていて、その流域周辺は温暖で風光明媚な丘陵地帯が広がり、タマーバレー(Tamar Valley)と呼ばれています。
 そして、ロンセストンに最も近くて、人気の観光ポイントはなんと言っても地元「カタラクト渓谷」でしょう。市内中心部から徒歩で行ける距離です。タマー川にかかるキングス橋から先が渓谷の観光ポイントになっています。
 橋の手前から渓谷ぞいの遊歩道「ジグザグトラック」(下地図H)を通って先に進んでみる事にしました。大きな岩肌の脇につくられた山道で下の方からは渓谷はあまりよく見えませんが、朝のちょっとしたいい運動になります。


 上りのピーク地点までくるとやっと目の前が開け、キングス橋の向こうにタマー川を臨めました。渓谷の対岸にも遊歩道があり、そちらがメインウォーク(地図@)になっていて、帰りはそちらを通るつもりです。
 ジグザグトラックを今度は下って行くとやっと渓谷の公園地帯に出ました。
ここまで20分ほどのハイキングでした。市内から車でここまで来る方法もありますが、せっかくなら渓谷沿いの道を歩くのがいいでしょう。
 この公園には、いくつかの展望施設、リフト、レストラン、屋外プールが備えられていて、さらに奥にも遊歩道のコースが何本か伸びており、ここでまる1日でも楽しめそうです。
 まずは、目当てにしていたチェアーリフトに乗って、渓谷を横断してみます。渓谷を展望するにはやはり空中からが一番でしょう。朝も早い時間なので空いています。チケットは片道と往復があり、料金の差はわずかだしせっかくなので往復を買いました。
 リフトは全長300mくらいはありそうです。朝の日差し、爽やかな風を受けて、ここちよく揺れるリフトに乗るのは実に気持のいいものです。もちろん切り立った岩山の谷間を流れる渓流の絶景はなんとも言えません。上流には、アレキサンドラ吊橋が見えます。リフトも中程にくると結構な高さです。そして10分程で、対岸に到着しました。こちら側には案内所やレストラン、展望施設がそろっています。どういう訳か、人慣れした孔雀が何匹か放し飼いにされていて、羽を広げては観光客の写真のまとになっていました。
 しばらく渓谷を展望した後、また同じリフトで引き返しました。すれ違うリフト客も徐々に増えて来たようです。岸に着いてから今度は少し上流に歩いてリフトから見えていたアレキサンドラ吊橋を渡ってみます。吊橋といっても、この橋は鉄でしっかり造ってあるので恐怖感はまったくありません。橋から更に上流を眺めてみると険しい岩山がせまっていて、より渓谷らしい景色が楽しめます。また遊歩道は、この上流のダム付近まで続いているようです。
 吊橋を渡るとメインウォークです。渓谷も十分楽しめたので、この道を通ってタマー川方向へもどる事にします。行きのジグザグトラックの道とは違って、終始渓谷が眺められるよう谷にそってうまく歩道が造られていました。日が沈むと岩や渓谷をライトアップされるので、カタラクト渓谷は夜も人気の観光スポットになっています。また、タマー川からクルーズ船が運行されており、船上から眺望するのもいいでしょう。
 タマーバレー周辺をはじめタスマニア北東部は見どころが豊富で行き場所にいろいろ迷ってしまいますが、ロウヘッドの夜のペンギンツアーはぜひ参加したいと思っていたので、予約の申し込みに観光案内所に出かけました。窓口でその旨を告げると丁寧な応対でNOCTURNAL TOURSにすぐに予約を入れてくれました。これで今晩の予定は決まりです。

 今日は朝方やや雲が多かったのですが、どんどん天気がよくなり、気温もだいぶ上がってきました。これからロンセストンの郊外、タマーバレーの東側にあるラベンダー農場(LAVENDER FARM)に出かける事にしました。ラベンダーの開花シーズンは、12月〜1月(南半球の初夏)なのでちょうどいいシーズンです。
 農場まではB81号線をほぼ一本道、約1時間弱で到着しました。手前からすでにほのかな香りが漂っています。
 ここでは、48ヘクタールの広大に敷地一面にラベンダーを栽培し、上質なオイルを抽出している他、蜂蜜や香水などラベンターを原料にしたお土産物を色々販売しています。
 中に入ると、その香りは一層強くなり、あたり一面、紫の絨毯を敷いたようにラベンターが開花していました。よく見るとまだつぼみが多く、満開のちょっと手前といった感じですが、実にみごとな光景です。農場内は、地道ではありますが、中の方まで入って行けるようになっています。
 ラベンダー畑の中を一回りしたあと、ガイドツアーに参加しました。ツアーはメインハウスを起点に30分おきに開催されています。農場の歴史やラベンダーの収穫そして蒸留プロセスなど施設を見学しながら説明が聞けます。なおガイドツアーは入場料に含まれていますので自由に参加できます。
 ツアーが終わりメインハウスに戻った後は、隣にカフェテラスがあったので、ちょっと一休み。ラベンダーの花を混ぜこんだラベンダーソフトクリームなるものがあったので一ついただきました。そして、帰りぎわにはもちろんお土産物を物色し、いくつか買いました。中でもラベンター石鹸はコストパフォーマンスがよく、手軽なお土産として良く売れていました。とにかく、いたるところラベンダーカラー、一色です。また花のいい香りが充満していてなんともいえません。


 ラベンダーファームの次にタマー川沿いの町、ヒルウッド(HILLWOOD)にあるいちご農園を目指しました。HILLWOODは幹線道路A8号線とタマー川に挟まれた小さな町ですが豊富な水と温暖な天候に恵まれフルーツの栽培が盛んなところです。今日はヒルウッド・ストロベリーファームに立ち寄りました。
 着いてみると本当の農家の軒先で営業している感じで入って行ってもあまり商売気はなさそうです。もっぱら、いちごシーズンは終わったばかりのようで、いちごの苗はありましが、実はほとんど付けていませんでした。最盛期は11月頃のようです。本来はいちご狩りもできるのでしょう。看板によるとこのシーズンは、Red- currant(アカスグリの実)のもぎ取りが体験できるとありました。
 ともあれいちごを目指してせっかくここまで来たので、名物のいちごクリームをいただきました。アイスクリームと新鮮ないちご、そしてホイップクリームが上にかかっているボリュームたっぷりのもので、結構いけました。ここではストロベリーワインも作っていて、カウンターですすめられ試飲させてもらいましたが、これは今ひとつでした。
 午後もいい時間になったので、一旦ロンセストンに戻り、今日からのホテルにチェックインです。昨日はElphin Villasに1泊しましたが、今日と明日の2泊は、「Coach House Motor Inn」に泊まります。場所は、町の中心を東西に走るヨーク通りに面しているのですぐに分りました。
 部屋は結構広くて快適に過ごせそうです。1部屋、AU$130で朝食付き。タスマニアのホテルは皆リーズナブルです。朝食はオーダーシートに書き込んで前日に頼んでおくと翌朝、ルームサービスをしてくれるシステムになっています。ここにくる直前、近くに大きなスーパー(Kマート)を見つけていましたので、飲み物やフルーツ、軽食など買い物して来ました。今晩は、昼間予約をいれておいたペンギンツアーに参加するので、食事は部屋でかるく済ませるつもりです。
 ペンギンツアーは、このロンセストンからタマー川に沿ってA8号線を北へ60キロ程行ったところにあるロウヘッド(LOW HEAD)で行われます。ロンセストン発のツアーもあるようですが、車があるので現地での参加で申し込んでいます。海岸から巣へもどるペンギンを見学するのでツアーの開始時刻は、夜9時スタートと聞いています。
 明るい内にと思ってちょっと早目に出発しました。A8号線を順調に北進、ジョージタウンを過ぎるともうすぐロウヘッドです。
 道なりに走っていると左側にツアーの看板と小屋、ワゴン車を見つけました。ここです。到着しました。
 主催者側の人達もずっといるのではなく夕方になると日々ここに来て客の応対をしているようです。ワゴン車後部はお土産物の店舗になっていました。私もピンバッジを1つ買いました。
 愛想のいいおばさんに予約票を見せると手にスタンプを押してくれました。
これで受付終了です。また予約をしていなくても、ここにくればツアーに参加できるようです。このシーズンは日没が9時ごろなので、ツアー開始時刻も9時となっていました。日没にならないとペンギンは姿を表しません。またこのあたり、道路から海岸にかけて柵があってペンギンを保護しており、個人では入れないので見学は難しいでしょう。
 まだ日没まで時間があったので、ロウヘッドの灯台を見にいきました。ここからも見えていますので歩いて行ける距離です。夕方の潮風はとても気持のいいもので、しばし海を眺めて時間を過ごしました。
 ぼちぼち日没も近づいてきたので、ツアーポイントまで戻りました。人も少し増えて来ました。ワゴン車が止まっていた道路ぎわの小屋から海岸の方へ道が続いており、時間になると案内されるまま道なりに付いて行きました。海岸線が見渡せるところまでくると見晴らし台が設置されていて、どうやらここからペンギンを観察するようです。夜9時前なのですが、なかなか暗くなりそうにありません。ただ気温は急に下がって来ました。この時点ではペンギンの姿は影も形もありません。本当に暗くなると姿を現すのでしょうか。
 9時が過ぎるとさすが、暗くなってきました。そして人も見学台のベンチに7割ほどうまったでしょうか。そしてようやく、ライトを持ったガイドがやってきて事前説明が始まりました。
 ここに生息するペンギンはフェアリーペンギン(Fairy Penguin)といって、
とても小さなペンギンです。体長約30cm、体重約1kgといいますから普通のペンギンのヒナのようなものです。
 生息地域は、オーストラリアの南海岸、タスマニア、ニュージーランドとの事です。
 ペンギンは普段、海中で生活していますが、巣は、海岸そばの草むらの下やヤブの下など安全なところに穴を掘って作り、夜になると巣に戻って来ます。この巣に戻るところを静かに見学するわけです。身体が小さいため敵も多く、警戒心が強いので決して脅かしてはいけません。ライトもフィルターを取り付けたもので脅かさないよう気をつかっています。
 あたりは、すっかり暗くなりいよいよイベントが近づいたようです。ガイドが赤いライトを海岸岩影のほうを照らすと、なんと数匹のペンギンがスタンバイしています。巣に戻るタイミングをうかがっているように見えました。すると、その中の数匹がちょろちょろ出て来てこちらに近寄って来ました。そこそこ早いスピードです。そしてまた闇の中へ消えていきました。そしてまた数匹。少しづつ数が増え、しばらくするといたる所で巣にもどるペンギンの姿が確認できます。結構、大勢いるものです。ほんとうに小さい、可愛いペンギンで懸命に歩く姿はなんともいえません。
 ほとんどのペンギンが上陸したタイミングで、我々はいくつかのグループに別れて、草むらの方へ静かに移動し、巣穴付近で見学させてもらいました。ここまでくると間近でペンギンが見えます。
うっかりすると踏みつけてしまうので細心の注意が必要です。上陸から巣穴までの小1時間のペンギンショー、貴重な光景を見る事ができました。ちなみに、ペンギンは結構、かん高い声をあげますが、どこかで聞いた様なトーンだと思ったら、このツアーを仕切っているオバサンの話し声でした。やはり似てくるものでしょうか。