3日目

2003.8.17

 

 快適なホテルのおかげで、昨晩は10時頃には眠りにつき、今朝は6時に目がさめ
ました。暗くなってから雨が激しく降っていましたが今はやんでいるようです。今日
は、山へ行く予定なので、天気が良くなるといいのですが。

 朝食は、7時からと聞かされていたので、
それまで周囲を散策することにしました。
 スイスのホテルのほとんどが、宿泊費に
朝食が含まれいるので場所を捜して食べに
行く手間が省け助かりました。
 ホテルの前からメインストリートにそっ
インターラーケン西駅まで歩いてみまし
た。まだ朝が早いせいか、人も車の通行も
ほとんどありません。爽やかな空気に満ち
て、とても気持ちのいい朝です。
 10分ほどで西駅に着きました。電車は
動いていますがホームは閑散としていまし
た。今日は、日曜日なので特にひっそりと
しているのかも知れません。
 大通りには、ホテル、レストラン、ギフ
トショップなどが数多く並んでいますが、
この町もよく掃除がいき届いておりスイス
は本当に清潔な国です。あらためて感心し
ました。
 西駅と東駅のちょうど中間くらいの所に
芝生が敷きつめられたヘーエマッテ公園が
あります。この公園から氷河に覆われた、
ユングフラウをちらっと臨む事ができます。
 今日は、このユングフラウを含めベルナ
ーアルプスの山々を堪能したいと思ってい
ます。
 通りを歩いていてると窓辺や建物の周囲、
歩道には花が美しく植えられ、目を楽しま
せてくれます。
 ホテルに戻ると、ちょうど7時頃で朝食
の始まる時間です。レストランに入ると、
まだ誰もいませんでしたが、ウェイターが
愛想よく寄ってきて、席を案内してくれま
した。コーヒーを注文したあとは、ビュッ
フェ形式です。簡単な朝食メニューと思っ
ていたのですが、コーナーのテーブルには、
フレッシュジュース、パン、チーズ、ハム、
ソーセージ、卵、フルーツ、シリアルなど
など、盛り沢山で選ぶのに迷ってしまいま
す。一通りお皿に盛りつけ朝から豪勢な食
事をいただきました。
 部屋にもどって、ナップザックに必要なものを詰めさっそく出かける事にします。
 水とスイスパスそして雨具は必需品です。今日一日は、ベルナー・オーバーラントの山々を周る計画を立てています。
 ベルナー・オーバーラントとは、ベルンの南に広がる高地という意味だそうですが、ユングフラウ、メンヒ、アイガーの三峰をはじめ、4000M級のアルプス連峰が見ものです。
 このあたり一帯に鉄道、ロープウェイ、ゴンドラが縦横に張り巡ぐらせ交通手段が充実しているので移動に困る事はありません。また極めて効率的にまわる事ができるので短期の旅行者でもいろいろなコース選択が可能です。一般的には、ここまでくれば、ユングフラウ登山鉄道でヨーロッパ最高地点の駅「ユングフラウヨッホ」を目指すのでしょうが、どうも団体客が多そうなのと鉄道建設自体はすばらしいのですが、そのほとんどがトンネル内という事。さらに何より、名峰に連なるユングフラウの姿を外から眺めたいという事で、私流の一日ではありますが、メンリッヒェンとフィルストを含む横断ルートを選びました。

■メンリッヒェン
 準備も整ったところでいざ出発です。アルプス山岳地域の起点は、インターラーケン・オスト駅(東駅)でベルナーオーバーラント鉄道(BOB)の利用から始まります。8時35分発の列車に乗りますが、途中切り放され、前側車両がラウターブルンネン行きで後ろ寄りがグリンデルワルト行きとなりますので注意が必要です。メンリッヒェンには、ホームにAと印された前寄りのラウターブルンネン行きの車両に乗り、さらに乗り換えてヴェンゲンまで行きます。ちなみに、ユングフラウヨッホへは、どちらから回っても、起点となるクライネシャイデックでユングフラウ鉄道に接続されています。
 ホームには少しずつ人が集まりだし、発車するころは、ほぼ満席となりました。発車ベルもなく、静かに動きだすと、もう、すぐに山間の景色となります。お天気もどんどん良くなって日差しがまぶしくなってきました。20分ほどの乗車で、ラウターブルンネンに到着し、となりのホームに停車中のヴェンゲルンアルプ鉄道(WAB)に乗り換えです。接続便なので乗り換えが済めば、速やかに発車しました。しだいに登りがきつくなり、遠方には、ちらほら氷河の雪原も見えてきました。10分少々でヴェンゲンに到着、下車したのはほんのわずかで、ほとんど人達は、クライネシャイデック経由ユングフラウを目指すものと思われます。混雑から解放されほっとしました。



 標高1275mのヴェンゲンは、静かな山間
のリゾートです。メンリッヒェンへのアク
セスは、このヴェンゲンから、ゴンドラ・
リフトで僅か5分ですので、ゴンドラに乗
る前にヴェンゲンの町を少し散策してみま
した。
 駅前周辺には花で飾られた美しいホテル
やレストラン、商店などが集まり、このあ
たりの中心地です。ほんの少し歩くともう
町並みからはずれ緑豊かな丘陵地帯となり
ます。町外れには教会が1軒あって、この
横はちょっとした展望台になっていました。
ベンチも備えられています。
 しばらく眺望を楽しみ一休みした後、も
と来た道をもどってスポーツセンターの隣
にあるゴンドラ駅に向いました。メンリッ
ヒェンまで15分間隔で運行されています。
料金は、スイスパスの提示で25%割引の16
.60chfになりました。
 出発すると、ヴェンゲンの町並みが瞬く
間に眼下となり、天気もいいので、遠くま
でよく見渡せます。下りのゴンドラとすれ
違い、少したつと山頂駅に到着しました。
 やはり真っ先に目に飛び込んできたのは、
ユングフラウを含むアルプス連峰です。
 いやーすばらしい景観です。
 せっかくですので、ここからメンリッヒ
ェンの頂上(2239m)へ足を伸ばしました。
よく整備された道が頂上に向って続いてい
ます。
 放牧された牛のカウベルを聞きながら、
なだらかな登り道を20分ほど進むと頂上に
達しました。ベルナーオーバーラントが、
一望できる最高の場所です。
 ヴェッターホルン、シュレックホルン、
アイガー北壁、メンヒユングフラウ、シ
ルバーホルン、ブライトホルン等々、悠然
たる姿が目の前に広がります。
 インターラーケンから乗車わずか40分
で、ここまで来れる交通網の良さにもあら
ためて感心しました。










■クライネシャイデックへ
 メンリッヒェンは、ベルナーオーバーラ
ント展望の中心地で、西はヴェンゲン、東
は、グルントとゴンドラ・リフトで接続さ
れています。
 ここからは、アルプス連峰のすばらい景
色を楽しめる絶好の場所なのですが、もう
ひとつの魅力として、ユングフラウ方向に
向かってクライネシャイデックまで南へ下
るハイキングが人気を呼んでいます。
 道がよく整備されており、ゆるやかな下
りなので誰でも気軽に楽しめるコースです。
また、時間的にも、クライネシャイデック
まで、1時間15分程度と負担にならない
距離です。
 ヴェンゲンからゴンドラでメンリッヒェ
ンに登った場合、山頂駅から左へ行くと、
メンリッヒェン頂上への道で、クライネシ
ャイデックへは、駅から右のコースを辿り
ます。まもなく、グルントから登ってくる
ゴンドラの駅がありますが、その駅の下を
抜けて、ゆるやかに下っている道がハイキ
ングコースとなります。
 正面の視界には、アイガー北壁、メンヒ、
ユングフラウが迫って来るようです。
 天気がいいので、ユングフラウヨッホの
展望台も伺えます。ピークはちょっと過ぎ
ているようですが、道端には、色鮮やかな
花も見られます。遠くでカウベルの音が聞
こえる以外、騒音もなく、爽やかな風が吹
き、空気が澄みきっている中、本当に気持
ちのいいハイキングとなりました。時おり、
クライネシャイデック側から歩いて来る人
とすれ違いますが、こちらは全般に登りと
なりますので、若干きつそうです。
 30分ほど歩いたところに、道端で何や
ら摘んでいる人達がいました。よく見ると
野性のブルーべリーがたくさん実をつけて
います。見ていると「あなたも摘みなさい」
と指をさされ、いくつか手にとって口に入
れてみました。ほのかに甘みがあり、その
人を見上げると、親指を立てて「うまいだ
ろー」と言わんばかりです。
 そうこう寄り道をしつつ1時間あまり進
むと、ようやく、下界に、クライネシャイ
デックの駅が見えて来ました。グリンデル
ワルト側からの列車とラウターブルンネン
側からの列車が合流し、ユングフラウ鉄道
への乗り換え地点です。
 駅に近づくにしたがって見晴らしのいい
場所にレストハウスがいくつかあり、その
内の1軒に入りました。またしてもビール
を注文、ユングフラウの眺望が最高のおつ
まみです。







■フィルスト
 クライネシャイデック駅まで下ると、ユングフラウヨッホへの乗換え駅だけあって賑わっていました。駅前はちょっとした広場になっていてテラスでビールジョッキを傾けている人、アイスクリームを頬張っている人、電車を待ってる人達で混雑していました。午後は、ここから東の展望台フィルストに向います。
 フィルストへは、WAB(ヴェンゲルンアルプ鉄道)で終点グリンデルワルトに行き、そこからまたゴンドラ・リフトに乗り換えです。WAB線は、最大25%の勾配を上り下りするため、線路と機関車が滑らないようしっかりとした歯車がついていました。
 スイスパスの所持で鉄道、バス、船舶など主要交通機関は、無料で乗り放題となるのですが、このあたりを走るWABとJB線は、25%割引きとなりますが、有料です。クライネシャイデック〜グリンデルワルト間は、普通片道運賃が29chfで、割引後で22chfを支払いました。登山列車ということで、料金設定は高めです。冒頭でも少し紹介しましたが、スイスでは改札が無いため、この電車でもきっちりと検札に回って来ました。もし切符がなければ、罰金!といろいろな本で紹介されていましたが、なければ乗車区間の支払いをしているようでした。(規則上は罰金なのでしょうが観光地の特例かもしれません)
 グリンデルワルトは、ベルナーオーバーラントの中でも一番人気の滞在地らしく、事前にいろいろ調べていたスイス旅行のツアーコースでもよく宿泊地として出ていました。インターラーケンより町は小さいのですが、日本人は、結構見かけます。
 レストラン、ギフトショップでは、日本語が使われており、かなり日本人を意識した観光色が濃い印象を受けました。私は、ちょっと苦手な雰囲気です。
 でも町並みは、あざやかな花で飾られ、とてもきれいなところです。
 そんな町並みを眺めながら10分ほど歩くとフィルスト行きのゴンドラ乗り場があります。4〜6人乗りのゴンドラが連なっているタイプなので、待ち時間なしで乗り込む事ができます。
 料金は、スイスパスの提示でフィルストまで片道23chfでした。途中駅として ボルト、グリンデルがありますが、終点のフィルストまで直行します。
 高度を上げて、ぐんぐん登って行くというより登りではありますが山間の長い距離を進むといった感じです。冬場は、このあたりはスキーゲレンデとなるのでしょう。
 終点のフィルスト(2171m)までふらふら揺られて20分ほどかかりました。ゴンドラ駅舎の2階が展望施設になっており、ちょっとした食事もとれるようになっています。
 こちらの展望台では、アルプス連峰の東に位置するヴェターホルン、シュレックホ
    ルンが主役で、メンリッヒェンの
    展望より山々と接近した場所で、
    また、一味違った景観が楽しめま
    す。(写真左がヴェターホルン、
    右がシュレックホルン)
     このフィルストも、多くのハイ
    キングコースが整備されています
    が、やはり、山上湖「バッハアル
    プゼー」を巡るコースが、最も人
    気があるようで、その方向へ向う
    人々が大半です。と言っても人の
流れは、ちらほらなのですが。
 フィルストの展望台からバッハアルプゼー(2265m)までは、ゆるやかな登りになっています。事前のイメージでは、もっと近いように思っていたのですが、目標とする湖まで結構歩いたような気がしました。登りという事もあり想像より遠く感じたのかも知れません。
 朝から一日天気が良かったせいとハイキングですっかり日焼けしてしまいました。気温も結構高く、スイスの2000mで結局、Tシャツ1枚で過ごせる陽気です。雨に備え、傘や防寒用として上着も用意してきたのですが、今日はまったく必要ありません。そんな中で、氷河を眺めているのですから、万年雪もずいぶん溶けてしまった事と思います。

     フィルストから結局、40分で
    ようやく、バッハアルプゼーに、
    到着。ハイカー達が、腰をおろし
    てくつろいでいる中、進んで行く
    とそこには波一つない静寂の湖面
    にシュレックホルンを映す神秘的
    な湖がありました。
     その一つの空間は、あまりにも
    自然で、あまりにも絵画的で、し
    ばらく視線をそらす事ができませ
    んでした。
 フィルストから、このバッハアルプゼー
まで来た人達のほとんどは、またフィルス
トに戻って行くようですが、せっかくここ
まで来たのですから、同じ道に戻ってゴン
ドラで下山するのではつまらないと思い、
コンドラの途中駅、ボルト(1570m)まで
のトレッキングコースを辿る事にしました。
ここから約700m下る事なります。
 フィルストへ戻る道と、ボルトへの道の
分岐点では、こちらへ向かう人は誰もいま
せんでした。また、ここから見る限り、前
を歩いている人もいなかったので、ちょっ
と心細い気がしましたが、道は分り安そう
だし、なにより、目の前のヴェターホルン
やシュレックホルンに向かって進む、すば
らしい景色が気に入りました。
 少し行くと、今まで歩いていたよく整備
された道とは違い、それなりの登山道とな
ってきました。
 コースには、岩などに、こまめにが付けられて
いるので、道に迷う事もなく安心です。また、全般
に周囲が開けているので解放感があり、見晴らしが
良くて気持ちのいい道が続きます。
 完全に孤独かと思いましたが、見通しのいい所で
ずいぶん先を歩いている人を発見。また後ろからも
距離は離れていますが、何人か下りて来るのを見つ
けました。
 コース途中には、ちょっとした滝や水飲み場など
もあります。バッハアルプゼーから歩き始めて40
分ほど進むと、ようやく下界が開けボルトの駅が小
さく見えました。まだ、少しかかりそうです。
 このあたりから、車も通れる生活道のような道に
なり、このまま進んでもボルトへ着くよう
ですが、山道を下りる近道のコースもあり、
こちらを選びました。
 やや狭いジグザグの山道をひたすら下る
とゴンドラの途中駅、ボルトに到着。1時
間20分のトレッキングを楽しみました。

 このボルト駅では、実は、妙な乗り物を
貸してくれます。名前は、トロッチバイク
(Trottibike)といって自転車に似ていま
すが、座席とペダルがなく、坂道を惰性で
走っていく乗り物です。もちろんブレーキ
だけはしっかりあります。
 ボルトで借りて、坂道を下りグリンデル
ワルト駅で返却する仕組みになっています。
 窓口で、事故の免責書類にサインをし、
レンタル料金15chfとデポジット(保証
金)100chfを支払うと、ヘルメットを
手渡され、トロッチバイクなる乗り物を用
意してくれました。
 最初は、要領がよく分らなかったのです
が、ブレーキをかけながらゆっくり下って
行くとだんだんコツがつかめ、風をきって
爽快に走れるようになりました。道路は、
すべて舗装されており、車もあまり走らな
い道なのでスポーツ気分で楽しめました。
30分くらいで、グリンデルワルトに到着。
誰がこんな遊びを考えたのか知りませんが、
スリルもあって面白かったです。
 グリンデルワルトのゴンドラ駅でバイク
を返却すると、保証金も返してくれました。

 まだ日が差して日中のようですが、午後
6時を過ぎようとしています。鉄道駅まで
もどり、インターラーケンへ帰ります。

 ホテルには午後7時に帰りつきました。1階のレストラン、テラスでは、すでに食
事を始めている人達も見掛けます。今日は一日よく遊びました。また結構日焼けして
しまいました。天気がよくて本当によかったです。
 シャワーをあびて、さっぱりしたところで、食事に出かけました。特にあてはなく通りを歩いていると、庶民的で賑わっているレストランがありましたので、入ってみました。テラス席に案内され、とりあえず、ビールを注文。乾いた喉を冷たいビールで一気にうるおしました。一日運動した後のビールの味は格別。最高です。
 食事のほうは、チーズ料理のラクレットとヴィンナー・シュニッツェルをいただきました。







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