4日目

2003.8.18

 

 インターラーケン2泊目の夜が明けまし
た。昨晩も、昼間の快晴から一転、激しい
雨が降っていました。このあたりは、夜は
いつも雨が降りやすい気候なのでしょうか。
朝になるとやんでいます。
 ホテルのすぐ近くに教会があって毎正時、
鐘の音が聞こえていました。
 昨日同様、朝7時から豪華な朝食をいた
だき、この後、DU NORDホテルともお別れ
です。荷造りを済ませフロントでチェック
アウトしました。ホテルでは、特に利用し
たものはなかったので、清算はありません。
 今日は、インターラーケンを離れ、ブリ
エンツに寄って、最後はルツェルンまで向
かいます。
 よく手入れされたホテルの庭に、朝日が
差し込み、今日の天気も良さそうです。

■ブリエンツへ
 スーツケースを転がしてインターラーケン東(オスト)駅まで行き、来た時同様、荷物の輸送(ライゼゲペック)を頼みました。引取りは、今度は本日の宿泊地、ルツェルンです。料金は、スーツケース1個の輸送で10chfでした。大きな荷物が無くなったところで、これから船でブリエンツに向かいます。
 インターラーケン(Inter-laken)は、その名のとおり、西のトゥーン湖と東のブリエンツ湖の間に位置する、湖に挟まれた町です。ブリエンツ湖の遊覧船は、オスト駅の裏側に乗り場があり、アーレ川からブリエンツ湖に出て、湖畔の町にいくつか経由したあと、終着駅ブリエンツの町まで行きます。
 インターラーケン・オスト〜ブリエンツ間は、鉄道もあり、時間的には、こちらの方が早いのですが、ゆっくり船旅を楽しみたいと思って遊覧船を選びました。始発の8時31分の船に乗る予定です。
 鉄道駅の陸橋を渡り、アーレ川沿いの船着き場に着くと、3隻の船が停泊していました。時間が少し早いせいか、まだ乗船時刻ではないようです。乗客の姿もまだ見掛けません。掲示板を見ると、1〜4番の乗り場のうち、3番の船着き場に止まっている船となっていました。3隻の中では一番小さい船です。そばに寄ってみると係員が、あと10分ほど待って下さいと言って出港の準備を進めていました。
 何人か人も集まりはじめ同じ船を待っているようです。渡り板の取り付けも終わり、いよいよ乗船です。この船はスイスパスが有効ですので、切符を買う必要はありません。天気もいいので、前方デッキに腰を降ろしました。デッキは2階にもあるのですが、こちらは1等となります。
 出発時刻になると汽笛を鳴らし、静かに岸を離れました。結局、乗客は10人たらずでチャーター便みたいなものです。大きい船でない理由がよく分りました。団体が入る以外は、このような空き具合なのでしょうか。
 そよ風を受けて湖面を進んで行きます。登山鉄道もいいですが、船旅もまたいいものです。氷河から流れだす乳白色の水によってコバルトブルーに染まる湖はとても綺麗です。湖上では、涼しい風が吹き、昨日の山の暑さはウソのようです。遊覧船は、揺れる事もなく穏やかに進み、1時間少々でブリエンツに到着しました。
■バレンベルグ野外博物館
 ブリエンツといえば、手彫りの木工芸が
有名らしく町中には専門のギフトショップ
がいくつかありました。
 観光では、蒸気機関車でロートホルン(
2298m)まで登るSL登山鉄道の旅、そし
て15〜19世紀のスイスの建物や生活を
再現した、バレンベルグ野外博物館めぐり
などがあげられます。(バレンベルグは、
バレンベルク、バーレンベルグとも表記)
 山岳方面は、昨日一日楽しんだので、今
日は、野外博物館の見学としました。
 バレンベルグ野外博物館へは、ブリエン
ツ鉄道駅の前から出る、黄色いポストバス
(郵便馬車の歴史を受け継ぐ路線バス)に
乗って10分少々行った、湖畔の丘陵地帯
に造られています。バスには、ナップザッ
クを持った人達が多く、皆博物館前で下車
しました。
 午前10時発のバスでしたので、博物館
もオープン直後です。入り口は西口と東口
があるのですが、ブリエンツからは、西口
ゲートが近く、バス便も多いのでこちらが
メインの入り口となります。入場料は大人
1人16chfでした。 料金を支払うと胸に
付けるワッペンをくれます。またここでは、
あわせて、日本語の案内書(2chf)も購入しました。







 とにかく広大な敷地に100近くの建物があり、どこから見ていっていいのか迷ってしまいます。ガイドマップによると2時間コースと4時間コースのルートが印されていましたので、とりあえず、西口から4時間コースを辿ってみることにしました。
 最初にあるのが、ベルン地方平原部の村です。重厚な木造建築、農家、質素な労働者の家などが再現されていました。ジュラ地方のエリアでは、農家の前で、レース編みの実演も見学できました。ちょっとした郊外学習や遠足のような気分です。
 建物の中も忠実に再現されており、ベッド、食卓、台所もあり暖炉にも火が入っています。今でも十分住めそうな感じです。また農家の畑では穀物やハープなど栽培されていました。中には立派な農家の建物もあり一軒づつ特徴が違うので見ていても飽きません。









 敷地内には、13のエリアからなり、それぞれ色分けで案内されています。また各建物1軒づつに番号が付けられているので地図と照らし合わせて見ていきました。
 平原部西部も農家が中心で、たばこが栽培されていました。
 平原部東部地域に移ると、建物の感じが、がらっと変わります。こちらは白い壁に細かい木のハリが縦横に組まれた繊細な造りです。
 このあたりがちょうど、バレンベルグ野外博物館内の中程となります。コース内の林道では、紅葉がはじまりもう秋の気配でした。









 赤い壁のオシャレな家が見えて来ると中央スイス地域です。十字路の角の建物は、テラス席のある、感じのいいレストランになっています。
 そのすぐ横は、ベルナーオーバーラント地域でブリエンツの家では、ちょうど木彫り工芸の実演を見学できました。ノミと木槌で力強く木を削っていました。
 また、さらにその奥の山岳農家では、チーズの製造場があります。こちらの作業は終わっていましたが、チーズのミルキーな香りが漂い、出来立てのチーズを味わう事もできます。
 バレンベルグでは食事のできる施設がいくつか整っていますが、パンとチーズ、ハムなどを買込んでベンチで座って食べている人をよく見かけました。パンとチーズはバレンベルグの名物にもなっています。見学のついでに販売しているところがあれば買っておくといいでしょう。その場で食べなくても、いいお土産にもなります。
 また、コース内の建物で、温かいお茶をサービスしているところが何軒かあり、その内の1軒でハーブティーをごちそうになりました。ブランデーなんかも置いてあって、温かいハーブティーにちょっと混ぜると香りが引き立って美味しかったです。
 周りは、外国の人達ばかりでしたが、同じテーブルを囲んでの楽しい一時でした。
 西口からコースにそって2時間半ほどの見学で東口付近に差し掛かり、一通り見学した事になります。1軒、1軒、丁寧に細かく見ていけば、まる1日過ごせるほど充実した施設だと思います。
 東口から出てもいいのですが、こちらは、バス便が少ないので、また西口まで戻りました。まっすぐ行けば、20分ほどです。西口付近にバスの時刻表があり、時間を確認してから、近くにある売店で、バレンベルグ製のチョコレートをお土産として買いました。チョコレート以外にも、この場所で作られている自家製ソーセージやパン、ジャムなどが置いてあります。
 時間を見計らって、博物館を出ると、ブリエンツ駅前行きのバスがちょうどやって来ました。
■ゴールデンパスライン
 こんどは、列車でブリエンツからルツェ
ルンに向いますが、インターラーケンから
ルツェルンに向うこの路線は、ゴールデン
パスライン
といって、スイス国内の鉄道路
線でも人気のあるパノラマ区間の一つです。
車窓からは、ブリエンツ湖、ルンゲルン湖、
ザルネン湖、ルツェルン湖が左右に望め、
ルツェルンまで変化に富んだ景色が続きま
す。利用したブリエンツからルツェルン間
は、1時間半くらいでしたが左側に座った
り右側に座ったり席を移りながら窓から見
える美しい風景を楽しみました。






■ルツェルン
 ルツェルンは、ロイス川にかかるカペル
橋で有名な観光都市です。
 午後3時すぎに駅に到着。朝、インター
ラーケンで預けたスーツケースを受取り、
まずは、ホテルへと向かいました。
 予約しておいたシーフホテルは、旧市街
地域、ロイス川に面して建っています。駅
からアルテス橋を渡って石畳を左に行くと
すぐに見つかりました。1階はテラス席の
あるレストランになっており、年代物のエ
レベータ(リフトの表現のほうが正しいか)
で2階に上がるとホテルのフロントです。
 名前を告げるとすぐにレジストレーショ
ンカードを渡され、記入が終わると重い鍵
をくれました。部屋はペントハウスの4階
(最上階)です。1階はグランドフロアな
ので、日本流にいえば5階になります。再
び、趣のあるエレベータに乗り指定された
部屋に入りました。
 歴史を感じる建物ですが、部屋は明るく
清潔で広々としています。予約の際に部屋
は、カペル橋の見えるリバービューと頼ん
おきましたので、窓からの景色は最高です。
 日のあるうちに何はさておき、さっそく
町の中へ散策に出かけました。

     ルツェルンの町は、ロイス川を挟んで両
    岸に広がっていますが、全体にこじんまり
    としており、主な観光地は、ホテルのある
    旧市街エリア周辺に集まっています。ホテ
    ル近傍は後まわしにして、まずは、ルツェ
    ルン湖の方向にあるホーフ教会(大聖堂)
    を目指しました。
     ロイス川に掛かる最も河口側の橋が駅前の幹線道路でもあるゼー橋で、これから先がルツェルン湖となります。湖畔に伸びる、この大通りを過ぎ、1本内側の小道に進むとスマートな2つの塔を持つ教会が見えて来ました。ルネッサンス様式の美しい建物です。手前の階段を登りきると正面の入り口になります。教会内には、立派なパイプオルガンがあるのですが、この時は残念ながらその音色を聞く事はできませんでした。
 ホーフ教会から出て右側、少し山手の方へ歩いて行くと、囲われた公園があって、園内の池の先に、瀕死のライオン像が横たわっています。ルイ16世を守ったスイス傭兵を記念して岸壁に彫られたライオン記念碑です。








 観光名所のひとつだけあって、ここには観光客がたくさん押し寄せていました。  ライオン記念碑がある公園の横には、氷河の残した渦の穴が見られる氷河公園がありましたが、こちらはパスして、城壁跡に行ってみました。
 この城壁は、ムーゼック城壁といって、かつてルツェルンの町を取り囲んでいたとの事ですが、今は、旧市街の北側、ムーゼック通りに面して700mほどが残っているだけです。
 朝8時から午後7時の間、城壁の上を歩ける区間があり、また9つの見張り塔の内、見学できる塔が3つあります。
 ムーゼック城壁へのアクセスは、城壁の南側、ムーゼック通りではなく、北側の遊歩道から見学できるようになっています。









 ライオン記念碑から城壁を目指しブランベルグ通り(Brambergstr.)に入ると、結構、きつい上り坂になります。正面には石造りの見張り塔が見えてきました。周りの住宅街とのコントラストが印象的です。
 この塔は、アレンヴィンデン塔(Allenwinden-turm)で、ここから城壁にそって遊歩道へ入って行きます。やがて、歩道の先にいくつかの塔が見えてくれば見学用の上り口があるシャーマー塔(Schirmer-turm)に到着です。入口付近には、城壁の案内板があり、登れる塔や見学コースが分かりやすく表記されていました。赤丸印が現在地です。
 さっそく塔内部に入ってみました。薄暗い階段を上がっていくと城壁の上に出ました。ここから2つ先のヴッアチ塔(Wach-turm)まで150mくらいの区間ですが、歩く事ができます。見下ろすと城壁から南側は市街地ですが、北側は住宅地が広がり、さらに緑豊かな丘陵地になっています。このあたりは、高台
になっており、塔や城壁
上部からは、ルツェルン
の町並みがよく見渡せま
した。特に、西寄り最後
のメンリ塔(Mannli-turm)
からは、ロイス川を含む
ルツェルンの市街地を一
望できます。

 ムーゼック城壁からロイス川沿いに下りて来ると15世紀初頭に造られた木造屋根付きのシュプロイヤー橋に出ました。カペル橋同様、こちらも相当古い橋で、屋根の梁に板絵が飾られており中世の歴史が感じられます。見かけ以上にしっかりとした造りで600年が経過しているとは思えませんでした。









 ロイス川を渡ると、すぐに自然博物館、歴史博物館の建物があり、左に曲がって川に沿って駅方向に向かって進んで行くと、向こう岸に先ほどチェックインしたシーフホテルが見えました。こちらから川辺に隙間無く並ぶ旧市街の建物を見るのもいいものです。ホテルに着いた時は、賑わっていた川岸も、夕方になりひっそりとした静かな風景となりました。
 ホーフ教会から山手を回って、ほぼ一周してきた事になります。
 この先のカペル橋を渡って旧市街に戻ります。カペル橋は、14世紀に造られた木造橋で、ルツェルン一の観光名所です。残念な事に、1994年に火災が発生し、焼け残った一部を除き、今は、修復された姿となっています。それでもルツェルンの町のシンボル的存在に変わりありません。

 旧市街、カペル通りに入ると、石畳が似合う中世の建物が並んでいました。夕方のこの時間は、人通りは少なく、商店も閉店の時間のようです。この地区の中程には、旧市庁舎があり、そびえる時計塔は、重厚な石造りで目を見張るものがあります。さらに通りを先に進んでいくとヴァインマルクトと呼ばれる広場に出ました。
 ホテルやレストランがあるこのあたりは人通りも多く、開いているお店も見掛けます。建物の壁には様々な絵や模様がペイントされており、ひとつずつ特徴があって楽しめました。
 この辺は、ちょうどシーフホテルの裏側あたりになります。まだ日がありますが、ホテルに戻り、少し早い夕食にして、明日に備える事にします。

■ルツェルン市街地図

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